はじめに
エアコン工事の中でも最も多いのが「入替工事」です。
見た目はシンプルでも、既存設備とのバランス・サイズの違い・冷媒処理・電圧確認など、
細かな判断力が求められる作業です。
この記事では、僕が現場で気をつけているポイントを交えながら、
エアコン入替工事の基本と注意点をまとめます。
エアコン入替工事とは
「入替工事」とは、すでに設置されているエアコンを撤去し、新しい機種に取り替える工事のことです。
新設工事と違い、既存の穴・配管・電線をどう扱うかの判断が重要になります。
ただし、僕の場合は基本的に配管・電線・ドレンホースなどはすべて新しく交換しています。
理由は、見えない部分の劣化が後々トラブルにつながることが多いからです。
たとえば、配管の内側が酸化していたり、ドレンが硬化して勾配が崩れていたりすると、
後から「水漏れ」「ガス漏れ」「電圧トラブル」といった形で現れます。
再利用できるケースもありますが、僕は“安心を優先する”方針をとっています。
エアコン入替工事の流れ
① 冷媒ガスの回収(ポンプダウン)
撤去前には必ずポンプダウンを行い、冷媒ガスを室外機に回収します。
この手順を守らないと、室外機が破損・爆発する危険があります。
安全のためにも、作業手順を確実に守ることが大切です。
② 室内機の取り外しと取付位置の確認
既設エアコンを外す際に特に注意が必要なのが、室内機の高さです。
例えば、既設の室内機が高さ25cmで、新しい室内機が30cmの場合。
この5cmの差で、既存の壁穴と位置が合わず、取り付けられないケースが出てきます。
その場合は、新しく穴をあけ直す必要があります。
また、室内機の上部スペースにも注意が必要です。
多くのメーカーでは上部50mm以上のクリアランスを確保するよう推奨されています。
この余裕がないと、風の流れが悪くなったり、メンテナンス時に上部カバーが外せなくなることがあります。
僕はこの50mmルールを基本として、必ず守るようにしています。
現場ではギリギリで収めようとするケースもありますが、
結果的にその“ゆとり”が仕上がりのきれいさや後々の点検のしやすさにつながります。
③ 室外機の撤去とサイズ確認
室外機も油断できません。
新しい機種は旧型よりサイズが大きくなることが多いため、
ベランダや壁面金具の寸法確認は必須です。
現場に入る前に寸法を確認しておくのが基本。
「たぶん入るだろう」で行くと、再設置や再配管の手間になります。
④ 新しい室内機・室外機の取付
取付では、排水の勾配に注意します。
勾配がとれていないと、冷房時に水漏れの原因になります。
勾配が逆になっている場合は、穴のあけ直しや拡張が必要になることもあります。
一見小さなズレでも、水が室内に逆流してしまうことがあるため、
最初の位置決めがとても大切です。
⑤ カバーの注意点(重要)
入替工事では、既設の配管カバーをそのまま使えるかも重要なポイントです。
エアコンの機種によっては、配管・電線・ドレンホースのほかに排気ホースや加湿ホースが必要なタイプもあります。
その場合、既設カバーの中にすべてが収まらないケースもあります。
特に、6.3kW以上のエアコンでは配管が「2分4分」と太くなるため、
以前の「2分3分」配管を想定したカバーでは物理的に入らないことがあります。
その際は、カバーを新しくやりかえる必要があります。
僕は現場に入る前に、必ず「配管径」と「カバー内寸」を確認しています。
見落とすと、取付直前に“カバーが閉まらない”ということになりかねません。
ほんの少しの確認で、仕上がりも見た目も全然変わります。
⑥ 電圧切替の確認
エアコンの能力を変更する際(例:2.2kW → 4.0kWなど)、
電圧の切替が必要な場合があります。
- 100V → 200V(大型エアコンに変更)
- 200V → 100V(小型に変更)
これを確認せずに取付すると、そもそもコンセントが刺さらないのでエアコンが試運転すらできません。施工前にコンセントの確認が必要です。
トラブル防止チェックリスト
- ポンプダウンを確実に行う
- 室内機の高さと穴位置を確認
- 上部50mmのクリアランスを確保
- 室外機のサイズを確認
- カバー内の配管径・内容物を確認
- 排水勾配を確保(逆勾配なら穴あけ直し)
- 電圧切替の必要を確認
- 配管・電線・ドレンホースは新品交換
まとめ
入替工事は、**「撤去+新設+判断力」**が問われる仕事です。
現場では想定外のことが起きるのが普通ですが、
一つひとつの確認を丁寧に行えば、安定した仕上がりになります。
「この人に頼んでよかった」と言われるのは、
見えない部分まで手を抜かない積み重ねの結果だと思っています。
この記事が、現場で働く職人や独立を目指す方の参考になれば嬉しいです。




