はじめに
電気工事士の勉強を始めたばかりの頃、僕はこう思いました。
「電線って、なんでこんなに種類があるんだろう?」
実際、電線は見た目こそシンプルですが、太さや種類を間違えると火災や漏電の原因になります。
だからこそ、電気工事士にとって「電線を理解すること」は、安全施工の第一歩です。
この記事では、現場でエアコン工事をしてきた僕の経験も交えながら、電線の基本を整理していきます。
大切なのは電線の太さ
電線の役割
電線の役割は、電源から電気を対象の電気機器まで送り届けることです。電線には銅が使用されています。この電気を通す物質を導体と呼びます。

むき出しの銅では危険ですので、電気を通さない物質である絶縁被覆で導体を覆うことで電気を閉じ込め、外部に漏らさないようにしています。
これにより電源から電気機器まで電気を漏れなく届けることができるようになっています。
導体:電気が流れる物質
絶縁体:電気が流れない物質
電源と電線と電気設備

電気の回路には大きく「電源」、「設備」、「電線」があります。
電源は一般的な住宅ですと分電盤があたります。室外の電柱から引き込んだ電線が住宅内の分電盤に届けられます。住宅用ですと100Vまたは200Vの電圧が使えるようになっています。
設備とはエアコン、冷蔵庫、ドライヤーなどのおなじみの家電製品などです。この設備と電源を電線が結んでいます。
スイッチをOFFにしていなければ電圧は電線に常にかかっている状態となっています。設備のスイッチをONにすれば電線に電流が流れて設備が使えるようになるという仕組みです。
使うほど電気は電線を流れる
電気機器を使えば使うほど電気は流れます。停電などで電源に電圧がない場合でなければ、電気機器(今回の図ではドライヤー)を使うほどに電線に電流が流れます。
以下のイラストを見てください。

100V電源に接続された電線があります。その電線を2本に分岐させてドライヤーを使います。1000Wのドライヤーに100V電源が接続されていますので、電線には10Aの電流が流れます。(1000W÷100V=10A)
分岐前の真ん中の電線は、ドライヤーがそれぞれ接続されている電線に流れる電流の合計が流れますので20A流れます。
続いて以下のイラストをご覧ください。
今度は同じように電源に接続された電線を5つに分岐して、それぞれにドライヤーを使うことを想定します。前イラストと同じように、5台のドライヤーを使うと分岐前の真ん中の電線には50Aの電流が流れます。

以上のように電気機器を使えば使うほど電流は電線を流れることになります。
電線に大きな電流が流れると電線の銅が熱をもつようになります。さらに進むと銅のまわりゴムの部分が溶けます。すると銅の部分がむき出しとなり、熱をもった銅により発火、火災へとつながってしまいます。
電線に電流を流しすぎると火災が起こる危険性が高まる。
心線には単線とより線がある

許容電流を間違うと電線が燃える
電線が太ければ太いほど流せる電流も大きい。電線に流せる電流を許容電流といいます。

どの電線を使うのが適切か?
太い電線使えばいいと思う
太い電線の方が許容電流が大きいのであれば、太い電線で工事すればいいのでは?と疑問が出る方もいるかと思います。
太い電線には許容電流が大きいというメリットがありますが、デメリットも当然あります。太い電線は値段が高く、施工がしづらいという点です。
太い電線は値段が高い
電気工事は、当然予算の制約を受けますので予算内で工事を完了させる必要があります。安全な工事ができる基準で予算内におさまる工事をしなくてはなりません。
太い電線は施工が大変
また太い電線は施工がしづらいです。太い電線は重いので運ぶのが大変、切断するのにも端子をつけるのにも専用の工具が必要などやりにくいです。
できるだけ細い線の方が値段も安く、工事も容易ですが許容電流という制約があります。したがって電気工事士は電線についての知識が必要となってきます。
太い電線は、値段が高い・工事が大変
絶縁電線とケーブル
電線の代表的なものとして絶縁電線とケーブルがあります。これらを簡単に紹介します。
導体と絶縁体からなる絶縁電線

絶縁電線ですが電気を通す導体と電気を通さない絶縁体で構成されています。導体を絶縁体で覆うことで目的地(電気機器)まで、電気を漏れなく届けることができます。
絶縁電線を外装で保護したものがケーブル

絶縁電線をビニル樹脂などの外装で保護したものがケーブルです。外装で保護することで強度を高めています。
この外装に絶縁電線が3本ある(上記イラスト)ものを3芯ケーブルといいます。2本であれば2芯、4本であれば4芯ケーブルとなります。
VVFほか、VVR、CV、CVTなどのケーブルが適材適所で使われてります。
まとめ ― 電線を理解することは“安全をつくる”こと
電線の知識は、試験のためだけではありません。
「火災を防ぎ、人を守る」ための基礎です。
太さ、種類、許容電流、施工のしやすさ――。
どれも一つひとつの現場で積み重ねる“安全の哲学”です。
電線を理解することは、電気工事士としての第一歩。
それは、ただの知識ではなく、「人の生活を支える技術」だと思います。






